2013年第25週「海がない」

 日が長くなった。海を見ない日々が続く。 

 俺が生まれた地域は海に面していて、海とともに暮らしていた。

 夜中にふらっと日本海を見に行ってた。特に理由はない。月の光が通らない吸い込まれてしまいそうな黒い海を眺めると、自分の足場が崩れていくような錯覚に襲われた。染みるような恐怖を感じるのだが、なぜだかそれに充足感を感じていた。当時、高校を中退していた俺には現実感が足りなかった。

 昼の海は青々として、見ていて気分が良い。太陽光線を反射してキラキラ光る波には非現実的な魅力がある。眼の前に広がる水平線はいくら焦点を絞ってもぼやけたままだ。そういうところも見ていて飽きない。

 夕日はとにかく美しい。映画のクライマックスのような盛り上がりと、桜が散るときのような儚さがある。毎日起きるただの自然現象で、昼間の太陽より輝きは鈍いはずだ。それなのに水平線に沈んでいく一瞬だけ、花火を見ているような情動に駆られる。

 引っ越してから、あまり海を見ていない。歩いていける距離に海がある生活は、かなり贅沢なことなんだと気づかされる。

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