2013年第?週「キャベツ切り師の憂鬱」

 午前2時30分からキャベツを切る。

 ここは標高1100m超の畑(高山)だ。満天の星空が近く見える。

 キャベツを「食用」の部分の葉だけ残して、包丁で土から切り取る。等間隔に植えられているキャベツの手前3個を切り取り、1歩進み、また見えてくる手前の3個を切り取り、1歩進む。進路の横に”キャベツの山”を作っていく。

 それを繰り返す。延々と繰り返す。

 この作業中、俺はボーッと考え事をしている。

 人間の脳は1日に6万回考え事をして、うち95%、57000回は過去のことを思い出しているらしい。

 ボーッと、余計なことを思い出す。

・「中学の時に、クラスの人に万引き犯と通報され学校と先生が嫌いになったこと」担任や親が信じない中、「やってません」を貫いたな。あそこで負けてたらもうちょっとダメな人間になってた。勝っても良いことなかったがな。

・大学時代、すげー嫌な先輩がいて「先輩の車おもいっきり蹴ってドア破壊したい」とイケナイ妄想する日々があったな。あー、思い出してもクソみたいな気分だ。

・不動産の更新料腹立つ。なにが「お振り込み下さい(手数料はお客様負担でお願いします)」だよヤクザな商売だまったく。

 基本的に、日が昇らないうちの自由思考はロクなことを考えない。こんなにはっきりと「夜は嫌なことばかり考える」ってのを知ったのは初めてだった。

 逆に、太陽が昇ってからはネガティブなことを考えられない。「ま、いっか」という気分になる。
 打って変わって、陽気な気分でキャベツを切る。腰が痛くなってくるが、そのしんどさもまた一興に思えてくる。

 高地の太陽はまったくもって刺すようだ。2,3時間もすれば肌が日に焼ける。ジメジメした暑さはないが、すこし痛い。バイト仲間と「暑い!暑いよ!快晴だよw」と全く会話になってない会話を楽しむ。

 突如、17歳の頃聴いていたGOING STEADYの「青春時代」が頭に流れだす。ここ数年、思い出すことはなかったはずだ。あの曲は「カビ臭い体育倉庫にセックスの後の汗がこびり付く」までがイントロなんだよ。俺の中では。

 歌詞がセンチメンタルになってしまうのは、二度と来ることのない一瞬を切り取って歌ってるからだ。だからどうした。こんなことを考えても何にもならない。俺はキャベツを切り続けなければならない。

 頭の中で歌が止まらなくなる。

 「サル~ゴリラ、チンパンジ~」疲れてくると流れる歌が幼児退行してくる。「サル」で1玉切って、「ゴリラ」「チンパンジー」でリズムよく1玉ずつ切っていく。リズム良く切っていくと1時間があっという間にすぎる。

 そうこうしているうちに、1日の業務が終わる。

 さっさと食って、寝る。繁忙期はキャベツが悪くなる前に収穫せねばならん。明日も早い。

 1日に9時間ぐらいキャベツを切る。あと2時間ぐらいは出荷用のダンボールを組み立てる(これを「ダンボールをぶつ」と表現する)。その他の時間は飯食ってるか寝てる。キツイといえばそうかもしれないが、ボーッと考え事をしている時間が、それほど嫌いじゃない。

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